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「ガールズ&パンツァー劇場版」感想 彼女が本当に取り戻したかったもの

というわけで先週日曜日に観て、勢いでもう月曜日にもう一回観た。ストーリー的には若干蛇足気味ではあるがTV、OVAも含めたシリーズの集大成として良い出来だった。今まで戦った相手が全員集合した上で30VS30の殲滅戦という展開はTVでは絶対できないであろうものだったが、それをTVをはるかに上回るクオリティで描き切ったのは素晴らしいと思う。
言いたいことは多数あるのだが戦闘描写等は色んなところで書きつくされている感があるので個人的な考察を少し書いてみたい。

「取り戻せ」というキャッチフレーズ

もちろん表層的な意味では無くなってしまう学園、引いては学園艦のことであり、大洗の面々はそれを取り戻すために戦うことになる。だがその一方で主人公である西住みほにとってはこの作品は姉との絆を取り戻す物語であると思う。
元々みほは姉のまほとは黒森峰ではともにチームに所属し隊長と副隊長という関係であった。しかしみほのとった行動により彼女は黒森峰を出ることを余儀なくされてしまった。これに関してTV版でも姉のまほは一貫して「気にしていない」そぶりを見せているのだが立場上それを自分からは言い出せない(彼女の場合母の手前というものもあるだろう)。みほの方はその件をずっと気にかけており、その悩みが解消されたのはTV版のラスト2回を経てようやくであった。TV版の最後に二人はようやくお互いにわだかまりがないことを伝えられた。その上で再び姉妹が絆を再構築するのがこの映画の裏の目的だったのではないだろうか。

過去と今の二人をつなぐもの

姉妹の絆を象徴する存在として今回ピックアップされたのが中盤出てくる二号戦車である。各種設定を読んでいる人は既に知っている事項だが、実はこの戦車はみほがプロフィールで「好きな戦車」として挙げているものだ。正直この項目自体長らく死に項目に近い状態だったので、この要素をここで使ってきたのは少し驚いた。彼女が好きな理由はもちろんそれが古き良き日の姉との思い出だからだろう。その戦車に二人で乗って過去を回想するシーンは元々セリフはあったが水島努監督が全てカットしたそうだ。素晴らしい演出だったと思う。同時にその頃の関係に戻りたいという二人の気持ちを象徴しているシーンだった。

戦いを通して復活する絆

ここまでを踏まえて後半戦の殲滅戦である。当初はもちろん他人の手前もあり他人行儀な呼び方をしていたみほ。一方まほの方はこの戦いの間を通して実質的な副官として、そして姉としての両面から全力でみほをサポートしている。そしてみほの方もそれに応じて最終的には「お姉ちゃん」と呼び姉妹コンビでの決戦になだれ込んでいく。最後のコンビネーションは姉が主導権を持っていた黒森峰では絶対に実現しえなかったものだろう。今まで姉の後ろをずっとついてきた妹が姉を引っ張って壁を乗り越えた瞬間だったと思う。

余韻、そして

エンディングでも姉妹の会話は声無しだったがTVのラストともまた姉妹の関係が変わっていることがうかがえるものであった。取り戻したいものを取り戻したということをシンプルに見せた良いエンディングだったと思う。
作品としてはこれで一区切りだと思う。今後があるとすればおそらくそれは母との絆を取り戻す物語になるのかなと思う(スピンオフで若干の示唆がある)。

最後に

とにかくエンターテイメントとして素晴らしい作品であり、同時に上記のようなしんみりした要素もあり。本当に素晴らしい作品だった。作り上げた人々に最大の感謝を。後何回かは見てみたい。