水戸ホーリーホック2019年の選手短評(MF、FW編)

歴代最高得点も…「誰が出ても水戸」の表裏

今年の水戸は全てにおいて歴代最高またはそれに準じる数字をたたき出したが、得点についてもそれは例外ではない。水戸のコンセプトの一つである「誰が出ても水戸」を合言葉に多少メンバーが変わってもどこからでも点が取れる攻撃陣を十分体現できていたのではないだろうか。反面現在の水戸の選手層ではスタメン=ベストメンバーとなり、交代しても戦力が落ちることはないが上がることもない、端的に言えば「切り札」がない状態であった。点が取れない時は誰が出ても取れないというのは実際いくつかの試合で監督の采配の迷いという形で出ていたと思う。シーズン20得点取れるエースがいるチームが必ずしも上に行けるわけではないが、やはりプレーオフや自動昇格圏を目指すのであればシーズン通して15点前後取れるストライカーは現状の戦力にさらにプラスとして欲しいところだ。
なおこれを書いている時点で長谷部監督は既に退任しており新監督は決定していない。

MF 前 寛之(8)

今年は札幌から水戸へ決意の完全移籍。ボランチとして一年を通してチームに貢献した。パスの配給やビルドアップの楔としての攻撃的な面に加えリーグでもトップクラスのインターセプト能力を発揮。加えてチームが本当に苦しい時に炸裂するミドルなどまさにチームの心臓というべき存在だった。一方で対人守備では若干の不安があり、致命的な場面を防ぐ代償としてもらったイエローカードはリーグ5位タイの8枚。結果として欠場した3試合がどれも「前がいれば…」という内容だったので来年はイエローをもらわない努力もしてほしいところだ。余談だが山口にいる兄も仲良く8枚もらっていたりするので多分この兄弟はそういうスタイルなんだと思う。

MF 白井 永地(18)

序盤は平野に譲る機会も多かったが茂木不在の右サイドを経て最終的に前の相棒としてボランチに定着した。前よりも攻撃的な配給ができ、ファーストディフェンスにも強くチームを救った。強烈なミドルシュートも武器だが欲を言えばもう少し枠内に飛ぶ率が上がれば…というところ。

MF 平野 佑一(6)

大卒2年目組の一人。非常に攻撃的なボランチで、ロングフィードプレースキックと長くて正確なキックが持ち味。ただ徐々に守備はサボりがちなのが目についてしまい監督的にも使いづらい印象がついてしまった感はある。結果的にリスクを負って攻めたいときのカードという扱いに収まったがこのままだと色々厳しいのでどのポジションを今後やるにしても守備は練習して欲しいと思う。

MF 平塚 悠知(25)

大卒新人トリオその1。ただ他の二人に比べるとボランチは層が厚くそこまで出番は得られなかった。クローザーとして起用される機会が多く守備に奔走していたが攻撃面の評価はまだこれからだろうか。来年に期待したい。

MF 木村 祐志(10)

水戸で再起を期するベテランだが今年はいくつか怪我もあったものの年間を通して左SHとしてチームに貢献した。前からの守備の連動という部分で要になることに加え、攻撃面では抜群に他の選手との距離関係が良かった印象。おそらく経験の豊富さによるものと思うがオフザボールの動きが抜群に良い選手でフィールドを俯瞰して見られるタイプの選手である。反面肝心のキックの精度が年間通して上がりきらずもったいないなあと思うことが多々あった。プレースキックがもう少し抑えられればなあ。

MF 茂木 駿佑(27)

こちらもレンタル移籍から今年完全移籍。決意のシーズンとなったがシーズン中盤にチーム唯一といって良い数か月単位の大怪我。戻ってきてみると福満がそこに座っており厳しいシーズンとなった。とはいえ彼の連続ゴールやアシストは間違いなく前半の快進撃の立役者であった。ポジションに加えて彼自身の脅威が知れ渡っているためかどうにも深く削られる回数が多かったのが厳しかったと思う。そこを回避できるようになればさらに上に行けそうな選手。

MF 福満 隆貴(17)

負傷した茂木の穴を埋めるためにC大阪からレンタル移籍。すべてのカテゴリを見てきた経験豊富な選手で、茂木に比べるとシャドー的な動きもできるということで時には逆サイドまで走る機動力と高い足元の技術で後半チームの攻撃を引っ張った。来年はさすがに回収されそうな気はしているが戻った先でもまだまだこれから活躍してくれそうな選手だと思う。

MF 浅野 雄也(45)

大卒ルーキーその2。…と思っていたらなんとシーズン途中に広島からレンタル移籍してきた有望若手にランクアップ。完全移籍で引っこ抜いた後こちらにレンタルで戻してくれる広島には感謝しかない。左SHとして木村の運動量が落ちた後に出てくる役割だったが彼の突破力を考えれば適任と言えるだろう。監督は当初サイド奥深くからのクロスを期待していたようだが実際は斜め45度からドリブルで突っ込んでいくタイプだった。結果的に先発で出すには志知との関係性はあまりよろしくなかった印象がある。来年は広島でやるのだろうか、それともまたどこかにレンタルされるのだろうか?

MF 外山 凌(23)

MF登録ではあるが何故か今年の出番は全てSB。とはいえ後半戦苦しいところで疲労の色が強かった岸田や志知の代役として攻守に良い仕事をしてくれたと思う。ドリブルでの切り込みとそこからのクロスには定評がある選手なので来年は左SHで木村と出番を争って欲しいところだ。

MF 森 勇人(20)

主に右サイドを主戦場とするMFだが今年はなかなか層が厚くて入り込めなかった。数少ない出番では積極的にシュートを放って行ったが大体宇宙開発していた印象が強い。ごりごり自分で行くタイプではあるようなのでフォーメーション次第では生きそうだが来年どうなるだろうか。

MF レレウ(30)

湘南から夏のウインドークローズ間際にレンタル獲得したブラジル人。獲得した当初は去年のジエゴ枠と思われており、すわ志知引き抜きかとサポ一同色めき立ったものだがどうもそうではなく広島の浅野獲得合意であわてて取った気配が。結局その後浅野は広島がレンタル扱いで水戸に戻してくれたためレレウは木村が出場できない試合でかろうじてベンチ入り、出場時間も20分にとどまったのは若干申し訳なさがある。ただ短い時間でも積極的にゴールに迫る姿は見せていたのでどこかで長い時間見てみたかった。

MF 黒川 淳史(32)

一応登録はMFなのだが今年はほぼ年間を通じてFWに。目標として掲げていた年間2桁得点は果たせなかったものの7ゴール4アシストを上げ、それ以上に数字に表れない前からの守備という部分でチーム躍進の原動力となった。夏場以降少しコンディションを落とす場面もあったもののドリブル突破や清水のコンビネーションは素晴らしかったと思う。後最近意識高めな水戸フロントの施策に妙にハマっていたイメージがある。彼と清水は大宮からのレンタルだが来年はどの道を歩むのだろうか。

FW 清水 慎太郎(14)

黒川とともに大宮ツートップとして活躍。一時期苦しんだこともあったが最終的に復調しチームトップの、そして彼自身キャリアハイの8ゴールを上げてチームに貢献した。フィジカル面においての強さとうまさを兼ね備えており良い選手だった。できれば来年残って2桁得点を目指して欲しいところだがどうなるか。

FW 村田 航一(11)

大卒ルーキーその3。一年目でいきなり11番を背負った時点でチームの期待が伺える。限られた出場機会の中ではあるものの今年のうちに初ゴールを決められたのは本人にとっても大きいだろう。黒川に近い攻守において走力を発揮できる選手で、体を張った守備やポストプレイもできる選手である(小兵なイメージがあるが清水よりデカかったりする)。課題はGKと1対1のような場面でどれだけ落ち着きを出せるかだろうか。ぜひとも水戸でエースとして大成して欲しい。

FW ジョー(9)

今年はCF的な位置づけで期待されていたのだが…。練習試合ではそこそこ無双していたという話も聞くのだが試合ではオフェンスファールを繰り返しボールが清水より収まらず。浪漫枠に近い扱いで長谷部監督もギリギリまでベンチに入れていたのだがさすがに小川が入るとお役御免という形になってしまった。どうも彼も外国人選手の取り扱いあるあるなところの「デカいけど別にポストプレイとか得意じゃないしむしろ裏抜けしたところに足元でもらいたい」選手な気がするのだがコミュニケーションも時間も足りなかった気配があり、双方不幸な一年だった。

FW 小川 航基(19)

磐田からやってきたスタァスター。年代別とはい水戸では珍しい現役日本代表であり本当良く獲得できたなと思う。その得点能力はやはり素晴らしく後半の17試合で7得点。もっと長くプレーを見たかった選手だった。ただ、チームとしての彼の活かし方が100点だったとはいいがたく、彼自体はどちらかというとサイドからマイナス気味のクロスで欲しいところをひたすら縦ポンした結果点が入らなかった試合もあったのはチームの戦術デザインを反省するべきところだろう(ある意味ジョーに対するのと同じ過ちとも言える)。加えて今年は五輪前ということでやたら招集が多く、招集されると微妙に調子を落として戻ってくるためサポ的にはストレスがたまる展開であった。無論彼のキャリアパスを考えればそこは絶対に回避してはいけないところなのだが…。五輪が終わった後にじっくり一年通して使ってみたいよなあ。

番外 佐藤 祥

水戸ではないのだが何故か各種媒体のインタビューで毎回名前が出てくる好青年。どれだけ皆に慕われているのか…。今年群馬に移籍してボランチとして開眼。今年は自分の目の前でゴールを決めてくれたのが本当にうれしかった。これを書いている時点で群馬はJ3の2位。彼が再びJ2に戻ってくるのを心待ちにしている。という私情。