サッカー日本代表アウェー連戦に思う、久保建英の活路

苦しみながら快勝したアウェー連戦

モンゴル、タジキスタン戦は苦しみながらも最終的なスコアは6-0、3-0と事実上の解消となった。その中で目を引いたのはこれまでチャンスをあたえられてきた久保建英の出番がわずか4分しかなかったことである。一切テスト要素なしの本気マッチにおいて見えてきた彼の立ち位置を考察してみたい。

現在の日本代表チームの守備戦術

森保監督は一時期3バックを試してはいたが、最終的に4バックを使う決断をした。その結果現在はスタンダードな4-2-3-1フォーメーションが採用されている。攻撃面はひとまず置いておいて守備について考えると、このフォーメーションでの前からの守備は基本的にボールをサイドに追いやって守るのが基本となる。前からプレスをかける場合でもそうでない場合でもほぼ能動的にサイドにボールを散らさせるかどうかの違いと考えて良いだろう。トップ下は前からプレスをかけるかボランチに蓋をするかして何にしろサイドにボールを誘導し、サイドハーフがそれに対して連動してプレッシャーをかけに行く。森保ジャパンもそのあたりは基本に忠実である。また、このフォーメーションでのサイドハーフは位置的に敵陣でディフレクションしたボールの回収や相手にそれを奪取されたときのファーストディフェンスを行う機会も多い。

良くも悪くも似た傾向を持つ二人の「FC東京産」サイドハーフ

中島翔哉久保建英。二人はどちらもFC東京に在籍経験があり、左右の違いはあれどどちらも似た傾向を持っている。プレースキックの名手であったりドリブルで打開する力を持っていたり、決定的なパスを出したりという攻撃面の一方で守備に関しては「リスクあり」と認識されているのが共通の大きな特徴である。中島はこれが原因でチームで監督に怒られているし、久保もテストマッチの時点で森保監督からこの点を指摘されている。無論あのクラスの選手であるので足元の範囲にボールが来た時のインターセプトは普通にできるのだが、対人守備ではあっさり交わされることが多いし、ハイボールは全く競ることができない。

チームとしてどこまで守備のリスクを許容するのか

これは監督が上記のような選手を使う時に考える悩ましい問題だと思う。FC東京において久保の守備が許容されていたのはひとえに「最終ラインまでボールを引き込んでから奪ってカウンターする」という健太流ファストブレイク戦術がベースのためで、サイドハーフはとりあえずプレッシャーをかけられれば最低限の仕事はできている感はあった。もともと森保ジャパンには先に中島がおり、ある意味すでに左サイドにリスクを抱えている状態であった。そこでさらに右サイドに同じリスクを抱えるかというと難しいところである。堂安も最初は同じようなリスクを抱えていたが以前より改善されていることや伊東の調子が良いことも考えると右サイドでの久保の立場は厳しい。

トップ下に君臨する南野

ではトップ下はどうかと言われると、こちらも現在南野が非常に調子を上げてきている。彼の特徴はタジキスタン戦で見せた通り「トップとの縦のポジションチェンジ」で、大迫、永井、鎌田のいずれとも非常に良い関係を築きながらゴールを量産している。この動きはいわゆるトップ下では偽10番的な横のポジション移動を得意とする久保とは対照的だ。今の日本代表では久保が偽10番として動いたときに代わりにエリア内に侵入して勝負してくれる選手が少ないことも彼をトップ下で使う際の大きなネックとなっている。

現代サッカーで守備が免除される選手は世界でも数人しかいない

結局これを我々にJリーグで見せつけてくれたのが他でもないイニエスタである。チームスタイル的にスペインでそこまで守備をしている印象はないが、実際にJリーグで彼が見せた守備能力は明らかにトップクラスのそれであった。バルサやレアルのアタッカーが代表で苦しむのはその辺のスタイルのギャップもあるだろう。そうである以上久保もそうならないために守備能力は向上させなければならない。スペインに戻ってしばらくして、彼は一回り肉体的に大きくなったように見えるのでマジョルカでしっかり成長して欲しいところである。

現状で久保を使うなら?

これは個人的な意見になるがここまで書いてきたことを踏まえてなお久保を使うのであればやはり中島を外すのが前提となると思っている。現状中島自身のパフォーマンスや周りの連動性がイマイチなこともあり、原口に替えて左の守備面のリスクを軽減することができれば右で久保を使う余裕もできるのではないか。ただしそれをするには久保は改めて中島以上に攻撃の実績を見せる必要がある。現在まだ彼はチームでも代表でも「具体的な数字」を実績として見せられていないのが最大の問題だ。その点を考えても一日も早くチームでのゴールが見たいところだ。